品物がすべてを語る。-作家 高橋克彦さんー
ぼくの記憶の中に、おやじがホームスパンのジャケットを25年も着ていたということがある。今、ぼくが改めてホームスパンを身に付けてみると体でその良さを実感するね。
羊毛の一本一本が空気という糸と一緒に織り込まれていて、薄くて軽いのに体中の熱というものを封じ込めてくれる。
盛岡を愛する心は、きっとぼくは誰にも負けないと思うけれど、地元発信といっても、まだまだ口先だけのものもある。しかし、ここあかね会の女性達が実際に毛を紡ぎ、機織り、ホームスパンに真剣に向き合って来た長い時間を思うと、この灯は消してはならないと思うよ。そして品物がすべてを語る。
良い物は良い、それだけだ。
盛岡には、冬を待つ楽しみがある。